ホーム » 食育情報BOX » 食育活動団体 » サカモトキッチンスタジオ » 料理研究家 坂本廣子・佳奈

アーカイブ

料理研究家 坂本廣子・佳奈

料理を通じた五感教育 料理研究家

坂本廣子・佳奈さん(サカモトキッチンスタジオ)

(転載)フルルkansai 2004年4月12日(月)

今、日本で「食」と「教育」は連日、ニュースをにぎわすほどの大きな問題を含んだテーマになっています。
そこで、料理本の執筆、子ども向けTV番組の監修、子ども料理教室など「食」と「教育」について多彩な活動をされている坂本廣子さんにお話をお伺いしました。
また、坂本廣子さんと、愛娘の佳奈さんに来週より、子育てのレシピの連載もしていだくことになりました。
坂本さんの料理による子育てにはどんな秘訣があるのでしょう。

五感を通して教えることができる料理の魅力

当日、取材にお伺いした時は、お二人で北米の子ども博物館に視察旅行に行く間近という、
大変お忙しい時間を割いていただいたにも関わらず、長時間話し込んでしまいました。
それほど、「食」や「料理」を通した二人の経験は豊富で、面白い話がつぎからつぎへと出てきます。
旅行前もあってか、話は北米の子ども博物館から始まりました。
「キッズプラザ大阪の外部研究員を5年つとめました。
2001年3月に研修のため、スタッフとニューヨーク、ボストンをまわりました。
有名なのは子ども博物館の発祥の地であるブルックリン、そしてボストンですね。
でも、そこで知り合った皆さんが全員、インディアナポリスが一番いいよと言うので、今度行くのを楽しみにしているんです」
キッズプラザ大阪は関西テレビ社屋ビルに併設されている、ユニークな施設と体験型のプログラムが人気の教育用施設。
実はキッズプラザ大阪のプログラムの多くのアイディアは欧米の子ども博物館を参考にしているのだとか。
ブルックリンが発祥の地なのは、移民の街ニューヨークで、子どもが異文化コミュニケ-ションをするために体験型の教育が必要だったから。
そこでは、見るだけではなく実際にさわることができるような教育が重要視されています。
「キッズプラザ大阪では、五感で学ぶ子どものための料理教室をやりましたが、アメリカの子ども博物館には本格的な講座はないんですよ。
日本でもうちの教室(サカモトキッチンスタジオ)だけなんです」と坂本さん。
日本食は食材を多く使い、組み合わせが豊富であるため、料理教育に向いているそうです。
「料理だけが五感で教育できる」と坂本さんが言うように、見たり聞いたりするだけではなく、匂いや味も含めた五感をフルに使う[料理」は、
「教育」という観点から見ても効果的なものだと言えそうです。

「ひとりでできるもん」 子どもの自信は一生の宝物

では、坂本さん自身は、どのように料理で子育てをしてきたのでしょう。
「狭い家だったので台所で子どもの面倒を見ていたんですけど、長男がすごく食い意地がはっていて…(笑)。
はじめはプラスチックでままごとのようなことをさせていたんですけど、本物じゃなければ怒り出して満足しなかったんですね」
そんな息子さんに対して、なんと坂本さんは1歳になる前から、包丁を使わせていたとか!
そうこうしているうちに1年も経たず千切りができるようになったそう。
子どもはまかせればできるようになる、というのが坂本さんの持論。
そんな自身の子育てから、後に反響を呼んだ名著『台所育児「1歳から包丁を」』や、
坂本さん監修のNHK『ひとりでできるもん』が生まれました。
「経験から言うと3歳から6歳くらいまでの子どもたちが一番効果があります。
子どもはその頃教わった経験を一生覚えています。
たとえば、豆腐を手にのせて、包丁で切ることを教えて、それができたら、その時の子どもの達成感はすごいものです。
その記憶は大人になってもずっと残っていて、多少の困難があっても、『自分はやったんだ』という自信があるから、乗り越えられるんです」
お話を聞いていると、まさに「三つ子の魂は百まで」という昔の人の格言はうそじゃないんだと納得。
その後、自分の子育てをしながら、みんなではじめた共同購入の料理教室で、料理の知識のない大人の多さに愕然。
子どもの頃からの料理教育の重要さを実感し、子どもための料理教室「たべるの大好き・つくるの大好き・キッズ☆キッチン」を始めました。

子どもから育む日本の食文化

実は坂本家では「食事だけは血の繋がったものが作るように」という父親の教えがあったそう。
長女の佳奈さんも、小さい頃から坂本さんに料理の手ほどきを受けました。
大学院を卒業した後、母親と一緒にサカモトキッチンスタジオで働く傍ら、レシピ本を共同で執筆するなど、親子での活動も盛んです。
今では坂本さんの料理を熟知した上、料理イラストも描ける佳奈さんは坂本さんにとってなくてはならない存在とのこと。
「いつから料理を覚えたか記憶がないんです」という佳奈さん。気がつけば覚えていた料理は佳奈さんにとってはごく自然なもの。
「大学の時、外食は食材が合わなくて食べられないことも多く、体調が悪い時ほど自分で作っていたんです」と言う佳奈さんは、
食材へのこだわりも人一倍。
そんなこともあって大学院時代は食環境の研究に力を注いだとか。
「食のことをつきつめようと思えば、食材も含めた食環境のことを考えざるを得ないんですよ」と坂本さん。
自分の使っている食材がどのようにして作られているか、日本各地を自分の目で確かめてまわったとか。
そして、製粉会社や行政とが協力した米粉の普及活動で、日本ではだんご以外あまり使われなくなった米粉にめぐりあいます。
米粉が普及すれば日本の食糧事情や、田園風景まで変わると言います。
さらに、食材への目は、アジアにも注がれるようになりました。
アジアの各地で日本に通じる食材と料理を発見でき、また、現地の食べ物を食べることで、
よりそこに暮らす人々のことが一番わかると言います。
それほど、料理は文化の根幹をなすものと言えるでしょう。

「日本の食の伝統が家庭でなかなか守れなくなっています。
入り口は私たちのしているような料理教室や本で学んでもいいと思います。
子どもが本物をわかるようになれば、今ならまだ日本の食環境を戻すことは可能なのではないでしょうか」という坂本さん親子には、
経験からくる自信が感じられます。
明治、大正時代、「食道楽」を著し、「食育」を提言した新聞記者・作家の村井弦斎に感銘を受けるという坂本さん。
もっとも吸収できる子ども時代に、本物の味を五感を通じた料理で伝えるという、坂本さんの地に足のついた教育は、
これからの時代にもっとも必要なものなのではないでしょうか。

PROFILE

坂本廣子さん/料理研究家。神戸生まれの神戸育ち。
同志社大学英文科卒。サカモトキッチンスタジオをベースに、「台所は社会の縮図」として、
生活者の立場からの料理作りを目指す。
幼児の食教育の一環として、調理実習を行うほか、
高齢者、障害者および一人暮しの人のための安全な調理法「炎のない料理システム」の普及など、実践的活動を行っている。
NHK『きょうの料理』NHK教育テレビ『ひとりでできるもん』をスタートから指導。
テレビやビデオ、雑誌、新聞などのメディアにおける活動に加え、商品開発、企画及び講演など多角的に活動中。

坂本佳奈さん/料理研究家。神戸生まれの神戸育ち。
大阪市立大学生活科学部大学院生活科学研究科前期博士課程修了(学術修士、専攻は食品の安全性)。
学芸員として、資料作成、チルドレンズ・ミュージアムにおけるハンズ・オン・キット作成を担当、
食まわりのイラストレーションも手がける。家庭料理における発酵食品を研究中。(納豆、臭豆腐、なれずしなど)

DATA

子ども料理教室「キッズ☆キッチン」/サカモトキッチンスタジオ
所在地/〒658-0014 神戸市東灘区北青木2-8-8
電話/078-452-0738 (子ども料理教室 担当/中村、大屋)
FAX/078-411-5418
E-mail kids-kitchen@vis.gr.jp
URL/http://www004.upp.so-net.ne.jp/skskobe/